朱焔さまより/13000HITリク小説(戦国無双)

朱焔さまのサイトで連載されている現代パロディ『織田生花店物語』の番外編で、リク内容は『設定そのままで、死線漂う病弱さをかもし出す光秀さん/吐血アリ』というものです。本編をご一読されてからのほうが、単独で読まれるより何倍も面白い&萌えるとおもいますb
朱焔さま、このたびは無理なリクエストにお応えいただき、本当にありがとうございました!

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少し寒い夜、俺は病院に居た。

「光秀…」

窓越しに、集中治療室に入っている光秀を見つめる。体調が悪化し、夜間に救急車で搬送されたのだった。
先生によると、今夜が峠、らしい。

病棟の寒さも忘れ、祈りの気持ちも一杯に、彼に目を向けていた。






抑[そもそも]は、約数時間前の話。

「今日、お前の家に行っていいか?」

最近ずっと早引きしていた光秀が、今日は元気そうだったので、機も良いだろうと思ったのだが…
思えば、それは幸であり不幸でもあったのだ。

「私の家ですか?勿論、いいですよ。」
「そうか。良かった。」
「じゃ、行きましょうか。」
「ああ。」



「お腹、空きましたね。」
「確かに…昼は握り飯一個だったからな。」

帰り際、道沿いにあるスーパーに寄って、夕食の材料を買った。



「帰ったら、すぐにご飯作りますね。」
「楽しみにしている。」
「はい!」






光秀の家に着いた俺達は、夕食を作り始めようとしていた。

「光秀、大丈夫か?体調、近頃良くないのだろう?」
「今日はマシなんです。」
「そうか…?」

そこで、押しきってでも俺がする、と何故言えなかったのだろう。
今日ほど後悔をしたことは無かった。



リビングで暫く光秀が戻ってくるのを待っていたが、余りに遅い。
様子を見ようとキッチンに向かうと、いつもより酷い咳が聞こえた。

「光秀、どうした!?」

嫌な感じがして、光秀の脇に膝をつき、支える。

「光秀!光秀!」
「ごほっ、ごほっ…!」

おさまらない咳。びちゃ、という不快な音と共に、生暖かいものが手にかかる。
自分の手を見ると、鮮血で紅く染まっていた。一瞬にして、血の気が引き頭が真っ白になる。
血で真っ赤に染まっている光秀の服が、多量な吐血を物語っていた。

(死ぬな、光秀、光秀…!)

苦しそうな息遣いに俺はやっと我に返り、救急車を呼んだ。



そして、今に至る。






「大分、内臓の調子が悪いようだ。」

先生から聞かされた、光秀の身体の事実。
まさか、そこまで悪化しているとは思っていなかった。

(…昼間は、元気だった…いや…)

きっと光秀は、無理をおして、気丈に振る舞っていたのだろう。

(…すまない、光秀…)

俺がそうさせているのだ。



高校の時から、光秀はそうだった。
…とは言っても、彼とは3年で初めて同じクラスになった。

貼り出される成績で、いつも俺と争っていた光秀。

それは、三年間変わらないことで、どのような人物なのかと俺は疑問に思っていたのだ。

「貴様が、明智光秀か。」
「はい。」

(まさか、こんな奴が学園1位とはな…)

美しい黒髪。女のように色が白く、凡そ男には見えないほどの顔だった。

「あの、何かご用でしょうか?」
「いや…」

話もせずに立ち去る俺は、かなり不躾だったかもしれない。

「?」






暫くしてから、光秀は俺に話し掛けてきた。
その内に、余り身体が丈夫でないことも教えて貰った。父親からの遺伝でらしい。



それからというもの、時折保健室に休みに行く光秀を、その都度見舞いに行った。

「身体は大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。いつも有難うございます。」
「気にするな。」

身体を起こし、淡く微笑む光秀。
こんな会話が常で、その時に大丈夫だと言っていても翌日は欠席、ということもよくあった。



大学に入ってからは、学部が違ったこともあるが――幾分かでもマシになったと思っていた。

(昔を懐かしむなんて、俺らしくもない、か…)

とにかく、今は光秀が回復することを祈ろう…

(俺を、置いていくな…)






願いが届いたのか、三日後、漸く先生の許しを得て、光秀に会うことが出来た。
意識はあるが、まだ完全に体は回復はしていないらしい。

「光秀…良かった…」

ぎゅっと手を握ると、光秀は此方に顔を向け、小さな声で何かを訴えてくる。

「何だ?」

耳を近付けると、僅かな音量ながら、何を言っているのか理解出来た。

…ごめんなさい。

「何故?」

…私、また貴方に迷惑を、かけた…から。

「何度も言っているだろう?迷惑などとは思ったことがないと。それに、こういうときは有難う、だ。」

もし、俺があの時光秀の家に行かなかったら、本当に光秀は命を落としていたかもしれない。

…有難う、三成。

「どういたしまして。さ、まずは寝ろ。体力の回復が優先だからな。」

…三成は?

「俺は傍に居るから、安心しろ。」

…良かった。



光秀が眠ってから、俺はそっと彼の髪を撫でた。



嗚呼、この華奢な身体に何れ程の苦しみを抱えているのだろう。
俺はお前の苦しみを和らげてやれているだろうか?

俺は、お前にいつも救われている。



願わくは、俺も、お前にとって、そんな存在であれるように…

(※改行などの一部を編集させていただきました。)


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